学校法人の創設者の本として、この本は良く出来ていると思う。
日本ではある時期まで教育、とくに公教育が経済を発展させた。政府が校舎などにお金をかけ、義務教育を普及させたことが識字率を上げ、読み書きの出来る子どもをたくさん作った。それが日本を経済的に発展させた理由という。
しかし、今はその公教育が処世術を教えるところになってしまい、教師も協調性ばかりを教える。それで個性がある子どもが育たない。
これは、先生に価値判断がないためである。つまり宗教的バックボーンがないからいじめは隠蔽されるし、生徒の個性が育たないから企業家が育たない。
だから大川隆法は宗教をバックボーンにした学校をつくろうと思った。
と、ここまでは建学の精神と教学理念が一貫しているように思う。
私立学校の理事長で学校をつくるにあたって、本を一冊書くことの出来る人が日本に何人いるのだろうか?
ほとんどいないと思う。そういう意味では大川総裁はひとつの体系だった主張をもっているといえる。褒めるつもりはないが、ここまでは許せるだろう。
ところが、いじめ問題の本質に迫るような記述では、??????と思うようなことがいっぱい出てくる。
いじめをどうしてなくすかなどは、安倍内閣の教育再生会議などを引用して、加害者に厳しく、被害者を守る、ということなどを展開する。
しかし、そもそもいじめが起きるのは生徒に「悪霊」がついているからであり、教師がいじめについて、「みんなで話し合いなさい」などと逃げるのも教師に「悪霊」がついているからだという。
そしてあまりにひどいいじめにあったら、「幸福の科学の学生部のひとに相談に乗ってもらう」ことを勧める。仏法真理塾「サクセスNO.1」が全国70カ所くらいにあるので、そこに来なさいという。
もっとひどい悪霊憑依のいじめには、「支部での悪霊撃退祈願にあわせていじめ撃退をしてもらってください」と書いている。
「いじめている人たちの名前を書き、その名前を読み上げて『この子たちの悪霊撃退をお願いします』」というらしい。デスノートのようにいじめている人たちの名前を書くことから始まるという。
これは正気かと思う。
いくらなんでも学校の創設者が書く文章ではないだろう、と感じる。
でもこれがカルトっぽい宗教の由縁だろう。
また、学校法人幸福の科学学園の中学校・高等学校には、学力だけで入るのは相当難しいらしい。
そのため、仏法真理塾「サクセスNo.1」での何年かにわたる精進や幸福の科学における両親の活躍も加味することになっているという。
えーーっ、と思う。
なんじゃ、これは?
要するに子どもを幸福の科学の塾に通わせて、親も寄付や祈願などで教団に貢献したら、生徒の試験の成績とともに評価してあげますというのだ。
『新宗教マネー』(宝島社新書)にも書かれていたが、幸福の科学は一家の誕生から死亡まで、ことごとくお金を出させるしくみを作っている。
大川隆法総裁は、わかっていてそういう教団の教祖を演じているのだ。
それが「疎外」された教祖と違うところだ。
いじめを祈願で撃退する。
そのための祈願料が必要。
幸福の科学の塾にも行かないといけない。
親も寄付をしなさい。
そういうストーリーがあるのだ。
大川隆法が、この学校を作ることによって、本気でいじめをなくそうと考えているとは思えない。
いじめにあった生徒の収容の場、親たちが子どもを避難させる所、そして何より性根のある信者を育てる学校。
そういう意味で、全寮制の学校を全国にたくさんつくることを大川総裁が計画しているのだ。
でもそういうこととはつゆ知らず、大川総裁の言葉が聞きたくて、先日、全国から大津市に1,000人以上の人が集結したらしい。
こういう学校が次々とできると世の中どうなっちゃうんだろう?
そういうことを許す世の中ってどういうところなんだろう?
なんか虚しくなる。