この本のなかで一カ所だけ幸福の科学の記述が出てくる。
「なぜ名誉毀損訴訟を濫発する宗教団体があるのか?」ということをテーマにした章だ。
「カリスマ性の強い教祖的存在を中心とした団体では、教祖や組織に対する批判が少しでもあると、訴訟で対抗してくることがあります。このような団体は、社会からの孤立を深め、一般社会に溶け込もうとしません。なお、こうした団体の場合、その組織内に信者である弁護士や組織のいいなりに動く弁護士がいる場合があります。組織にとって、言いなりになる弁護士は便利かもしれませんが、大局的にみると不幸な存在といえるでしょう」(p.319)
これに当てはまるのはオウム真理教や幸福の科学だろう。
オウムには信者で京都大学在学中に司法試験に合格した青山弁護士というのがいた。入学試験が難しい大学に入学したり、合格するのが難しい試験をパスすることと社会的に立派であることとは必ずしも一致しないという典型のような人だった。
幸福の科学にもオウム真理教と同じように信者弁護士が教団の本部にいる。
「このような宗教団体については、マスコミも訴訟を起こされると厄介なので、だんだん論評しなくなります。これは、その宗教団体が一般社会においてどのように受け止められているかをみる鏡を自分で割ってしまっているようなもので、独善的な組織運営や活動の指標となります」(p.320)
この例に当てはまる3つの宗教団体が上げられている。
ライフスペース、ワールドメイトと幸福の科学だ。
ライフスペースとは、成田のホテルでミイラ化した死体が見つかって注目されることとなったあの団体だ。主宰者は「ミイラには15℃の体温があり、死んでいれば0℃になるはずであり、従ってミイラは生きている」と荒唐無稽な主張で有名になった。主宰者の高橋には殺人罪での有罪判決が出た。本当に気味の悪い団体だった。
ライフスペースは、テレビ局の司会者、ジャーナリスト、ホームページの主催者や家族の関係者まで意に沿わないと訴え、その数は数十件に上ったらしい。
幸福の科学についても解説がある。
フライデー事件などの説明の後、献金返還訴訟の弁護士への8億円訴訟について書かれている。
「<認容される見込みがない異常な請求額で、批判的言論を威嚇するための提訴>であるとして、訴えられた弁護士の反訴を一部認めて、幸福の科学に対し、100万円の慰謝料の支払いを命じました(最高裁平成14年11月8日決定により確定)」(p.321)。
ライフスペースと同列に扱われているのは、幸福の科学にとっては心外だろう。
でも、程度の差こそあれ、外から見れば同じような団体に見える。
殺人という刑法犯罪=反社会的行為を起こすことと起こさないことの境は何だのだろう。
今、幸福の科学は、元幹部の大川きょう子に対して悪霊払いの公開霊言を教団内で行っている。信者は「悪妻封印祈願」の文章を唱和し、合掌する。
これは異常に思える。
でも刑法犯罪かどうか、刑法上の名誉毀損にあたるかどうか、微妙だろう。
大川きょう子も刑法上争うために親告するわけではなく、民事上の不法行為の名誉毀損で争うらしい。
妻を悪霊と呼び、経典からその人の記述を削除する。
こういう宗教団体グループがつくる学校が、法律で認められるなら、その社会は異常だろう。
滋賀県の文教関係者や私学審議会委員の良識を期待する。